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“伝統”数秘学批判
──「公然と隠された数」と周回する数的祖型図像 [13]
“4”の時代〜「元型的水曜日」(中ノ下)

■ 大英帝国と“4”の象徴

Canterbury Cross (Miniature) Great Britain Map

そして複層的な秘教的図像の別次元においては、ユニオンジャックは中央を上下左右に分断する十字架によって「四つの領域」を明瞭に表徴し、大英帝国の「四つの王国: England, Scotland, Wales, Northern Ireland」が暗示されているのをわれわれは認める。「数性4」の権化である連合王国は、四つの国によって成り立たなければならず、こうした象徴的《兆し》は英帝国大連合へと北アイルランドが暴力的に併合を強要されることによって完成する。象徴完成への下意識的な動機が現実の歴史を造るおそるべき一例である。

地図引用先:Travel with Pooh through Britain!

こうした「四つの領域(王国)」が“4”の時代を支配する大英帝国の象徴であるという事実は、例えば花弁で表現される“quatrefoil”(クァトロフォイル)という擬似十字形の図像を通しても顕われている。十字架がそもそも本源的に「数性2」を表す記号として出発したことを考えれば、この種の「十字架」は、十字架の亜種 (one of variants) と言って良いものであり、二本の棒を強調するものではなく、四方に等しく伸びる部分(領域)を以て数性の象徴とするのである。すなわち、十字架は“2”に始まり、“3”へと変異し、それが最後は“4”となるのである。こうした建築装飾の要素としての“quatrefoil”は、イングランドその他の欧州各地で見出される。

こうした「花弁の成長」という秘教的図像における範型的な数的伸展は、“3”を表す「三重円」から“4”を表す「四重円」でも表現される。この“quatrefoil”に見出される図像パターンは、まさに交差点から等しい長さで上下左右に伸長する十字架の「四腕」が、膨張したものと観ることもできるのである。

“Quatrefoil”やそれに準じる図像に共通するのは、十字架が「ローマ十字」というよりは上下左右に伸長する「梁」の長さが等しいパターンを持ち、系統的には「ギリシア十字」に近いものである。また、特筆すべきこととしては、そして後に論じるカンタベリー・クロスに近い図像が現れていることなどがあり、この種の「数性4」を暗示する十字架は、ユニオンジャックの登場より数世紀先んじて英国には登場するのである。それらの例は英国内で使われたコインがある。


■ 「錯視図像」としてカンタベリー・クロス

Canterbury Cross [1]

イングランド本土における英国国教会 (The Church of England) の「大本山」であるカンタベリー教会をあらわすカンタベリー・クロス (Canterbury Cross) と呼ばれる「十字架」は、その考え抜かれた意匠によって、「ひとつの十字」が「数性4」を明瞭に表現することに成功している。数性はその十字架の上下左右に伸長する「本体」そのものが指し示すばかりでなく、聖ジョージ・クロス系の「十字架」(Christian Cross) を描く直線と曲線を通して、その「背景」が表徴として浮かび上がる錯視図的な効果*によっても指し示される。つまり反転して浮かび上がったプロファイルが聖アンドリュー・クロス系の“saltire”(力の十字)として見えてくることによっても、その中にも強い「数性4」の意味性が含まれる。カンタベリー・クロスは巧妙にもそのような視覚的に反転する効果を狙っているためにそのような入り組んだ意匠を採用したと思われるふしがあるのである。

Canterbury Cross Sakushi 1 [2] Northeastern Canterbury Cross (Sakushi 2)[3]

そしてそのようにして浮かび上がってくる形象こそ「信仰」と「力」というふたつの十字架なのである。したがって、ひとつの十字架のオブジェにも関わらず、その工夫の跡が観られる特殊な十字架の形象を通して、これまで観てきたように“4”の時代に相応しい二重の意味をコミュニケートするのである。

図版引用先
冒頭の図版:Fine Stone Miniatures @ Canterbury Cathedral
[1] A Virtual Tour of the Cathedral @ Anglican Cathedral of St. John the Baptist (Canada)
[2] Terra Sancta Guild (e-Shop)
[3] Spring 1998: Welcome our Interim Chaplain, Daphe Cody! @ Canterbury At Northwestern


* 錯視図の例としては、描かれた壷の絵において壷本体とそれが作り出す図像プロファイルが向き合った人の顔のようにも見えると言う「ルビンの壺」がよく知られているが、こうした意味性を発揮する内容部分とそれを浮き上がらせるための無内容部分の関係が反転して浮き上がるという錯視的な手法というのは、秘儀伝授的な目的を成し遂げるための儀礼ツールとしてはかなり一般的に広く使われているものと考えられる。

また「※印」形の図像*によっても、ひとつの十字架(十字ないしX字のどちらか)で区切られる四つの領域が暗示され、また「数性4」を伝達する記号として機能することがある。これは区切られた領域の振られたドット(点)の数が数性を暗示するのである。これは十字架が数性を表そうとする時のひとつの典型である。

Scotland Bank Bill
王立スコットランド銀行の発行した1ポンド札

Bank of Scotland logo
スコットランド銀行のロゴタイプ

* この徴は聖アンドリュー・クロスとの組み合わせで登場することが多い。現に、聖アンドリュー・クロスを持つスコットランドには日本の米印とほとんど同じ「※印」形の象徴が存在し、それはスコットランド銀行のロゴタイプに使われており[図版参照]、「数性4」の濃厚な「※印」の亜種的な図像も王立銀行の発行する紙幣などにも見ることができる。この図像は十字を単に聖アンドリュー・クロスであることを表現するばかりでなく、そのドットの数で「数性4」を暗示した例ということができる。

すでに最初の章で若干観察することになった聖母マリアに伴って登場する幾つかの八芒星の図像の幾つかは、この「二重十字」のヴァリアントと捉えることも可能である(またそれを明らかに意図した例も見られる)。通常の八芒星なら等しく八本の針が八方に放射されたものであり、二種類の十字架が組合わさったものと捉えることは困難であるが、あえてふたつの十字架が組み合わさったように表現される八芒星が散見されるのである。ここには秘教的には極めて大きな重要性が潜む。何故なら地母神を表す「数性8」が、等しく八方へと伸びる直線によって、「信仰」と「力」の絶妙な均衡さえも表すからである。

また、聖母マリアの八芒星においてもまた、直線で仕切られた八つの領域にそれぞれドットが振られて「数性8」を強調するケースが見られる。




posted at 01:19:00 on 2006-04-30 by entee - Category: 伝統数秘学批判 TrackBacks

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