entee memo

“伝統”数秘学批判
──「公然と隠された数」と周回する数的祖型図像 [9]
“3”の時代〜「元型的火曜日」(中)【挿入節】

【挿入節】

■ 2の図像から3の図像へ
Greek cross Latin cross
右:ギリシア十字:Greek cross (crux immissa quadrata)
左:ラテン十字:Latin cross (crux ordinaria)


十字架の「数性」遷移について若干の言及をしておく。

ローマ・カトリックの十字架は、水平の直線である「梁」が、十字図像の点対称の中心より上にある。そして水平軸は垂直軸よりも短い。この意匠上の控え目な改変は「数性2」の図像を通して「数性3」を暗示することを目指した結果である。「ギリシア十字」と異なり、中心軸がやや上に設定してあるこの「ラテン十字」においては、水平線の中心から左右に伸びる二方向の直線の長さと二本の直線の交差点から上へと伸びる垂直軸の「三本の線」の長さが等しいというデザインにより、その「数性3」への傾向が表現される。

Roman Cross = Trinity
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確かに通常のラテン十字ではその暗示は控え目なものであるが、教会聖堂の平面デザインにおいて上記の三本の棒に当たる部分が等しい長さとして設定してあるものは、通常の十字架よりもこの「数性3」の暗示を強めることを意図した結果なのである。

範型的なローマ・カトリック「ラテン十字架」をデザインコンセプトとしている教会聖堂の平面プランの現れ方は、地上から伸びる一本の幹から天に向かって三つ又に分かれる「枝の伸張」が抽象的に表現されているものと理解することが可能であり、ということは伝説上、聖パトリックが「三位一体」を教示した時に指し示したとされる「三つ葉のクローバー」の形状と同じ図像的元型を教会の平面プランが共有していると言えるのである。

ローマ・カトリックの大本山であるサン・ピエトロ大聖堂*の平面プランは、まさに十字架が「数性3」を表現するためのデザイン上の遷移の範型的形象を保ったものと考えることができる。その他にもさまざまな教会聖堂の平面プランのバリエーションがあるが、十字架が「数性3」を明瞭に表すものとして意図されたものが、他ならぬバチカンの大聖堂のプランであるというのは極めて示唆深いことと考えなければならない。こうした「数性3」を十字架状の形状で表現しようとしたものとしてフィレンツェの大聖堂(同じくローマ・カトリック)がある。

Latin cross & St. Pietro
ラテン十字(左)とサンピエトロ大聖堂の平面プラン(右)

Filenze Cathedral St. Elizabeth, Germany
Florence Cathedral (Italian Gothic) 1296-1436(左)とSt. Elizabeth, Marburg (German High Gothic) 1233-1283(右)。いずれも「数性3」に変容した十字架がモチーフである。
図版引用先:Romanesque and Gothic Architecture

* サン・ピエトロ大聖堂に関しては聖堂の外側にある楕円形の広場にもわれわれは注目すべきである。十字架の向きを天地の基礎と考えた場合、その広場は転倒した「Ω祖型」的な図像とも捉え得るもので、それはイスラムの聖地、メッカのカーバ神殿の平面プランに見出されたものと同様の性質を持ったものであることが分かる。さらに驚くべきことに、ローマのこの「大本山」の正面広場に関しては、この転倒したΩ祖型図像の基部に「鍵が刺し込まれようしている」ものと見ることができる。つまり“Ω”によって表現される「周回の閉じようとする部分」、すなわち終わりと始まりの出会う地点の間隙部にその「鍵」は挿入されようとしているのである。それは他の多くの聖堂の平面プランにも見られる如く、大聖堂で表される十字架自身が「鍵」の形状をも模しているためであり、したがって“Ω”によって表徴されるある「コト」と「モノ」とを「開く」ための鍵を意味していると読むことができるのである。その場合、キリストによって聖ペトロに手渡されたとされる「鍵」が、何を封印し、何を解錠するするものであるのかを理解するヒントが隠されていることになるのである。





posted at 19:34:00 on 2006-04-05 by entee - Category: 伝統数秘学批判 TrackBacks

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