entee memo

レオン・フライシャーという現世への《贈与》

『羊は静かに草を食み』ピアノ版。この、静かに連打される和音。これは一体どこから聴こえて来る音なのだろう? 天か? それとも内奥からか? いや、それは購入からもう15年経つ旧いテレビの小さなスピーカーから聴こえて来ている。

Concert Memoirという本ブログのカテゴリは、自分が足を運んで見聞きした主に音楽パフォーマンスについての備忘録のはずであったが、テレビで放映していた音楽にこれほど感動したのはまれなので、書いておく。これは内田樹式に言えば《贈与》である(「恩寵」と言いたいところだが)。だが、それはテレビといういまや「死にかけた」メディアから流出して来た愛でたき《贈与》だったのである。

レオン・フライシャーは、Columbiaの往年の有名録音を集めた廉価版シリーズのCDでセルと共演していたラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」で知っていたが、音盤を追いかけたこともなかったし、特にどんな演奏をする人なのかという印象も持たずにいた。

Freisher-Rachmaninoff

しかるに、この日12/4にNHKで放映した彼の闘病についてのインタビューとその後の演奏実況を聴いて大いに感銘を受けた。そこで聴いた音楽のいくつかは全く初めて聞くものだった。

例えば、J.S. Bachの『旅立つ兄に思いを寄せる奇想曲』BWV992、SchubertのピアノソナタD960。この2つは是非もう一度聴いてみたい。Schubertは、特に愛聴する作曲家ではないが、こうして美しいものの存在をこの歳になってひとつひとつ発見していけるのは、実に幸運という他ない。(それにしても美しいものは、ただ単にそこにあることに気づくというよりは、それへの一瞥を与えるための、第三者による眼差しなり、実際に奏でられる具体的な奏者による音を通して常に行なわれるのである。あたりまえではあるが、こうした媒介者の存在は再現芸術に関しては過小に評価されることが多いように思われるのだ。)

芸術劇場 −レオン・フライシャー ピアノリサイタル−

posted at 05:05:00 on 2009-12-05 by entee - Category: Concert Memoir TrackBacks

コメント

No comments yet

コメントを追加

:

:

トラックバック

TrackBack URL